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販売員からVMDディレクターへ転身!新しい挑戦がVMDの可能性を広げ、未来を作る

今年より講師を努めさせていただくJDCA(Japan Display Creator Academy)にてインタビューをしていただきました。


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販売員からVMDディレクターへ転身!新しい挑戦がVMDの可能性を広げ、未来を作る

今春から新たにジャパンディスプレイクリエイターアカデミー(JDCA)の講師陣に加わった、VMDディレクターの五十嵐雅浩さん。2015年に、VMDコンサルティング事業を手掛ける「I APARTMENT」を設立し、国内の大手企業はもとより、中国などでもVMD業務を実施しています。販売スタッフからスタートした五十嵐さんが、VMDとどのように出合い、おもしろさに目覚め、実績を積み上げてきたのか。VMDのプロとしての心構えなども含めて、率直な思いを語っていただきました。




販売員の肌感で作った売り場が、VMDとしても評価されて開眼!

マルイに入社し、ファッションビル内の店舗で販売員として働き始めた五十嵐さん。「店舗の販売員さんってキラキラと輝いていて、自分もあんなふうになりたいと思ったんです」と、志望動機を明かします。憧れの販売員として勤務していた5年間、とくにVMDを意識することはなかったものの、お客さんを喜ばせたい一心で売場作りをしていたら、気付けば売上げはトップクラス。いったい、どんな売り場作りをしていたのでしょうか。

「とにかくキレイに整った売り場を作ることに徹しました。あとは、日々のお客さんの動向を見て、反応のよい商品を目立つ場所に陳列したり、1週間後に欲しくなるであろう商品を予測して目に入る場所に陳列したりしていましたね。僕が仕掛けたとおりに、お客さんが行動してくれるので、おもしろかったですし、やりがいもありました」。

 そんなある日、社内のVMD部による店舗巡回があり、当時のクリエイティブディレクターであるウディ・シムコさん率いるVMD集団が、五十嵐さんの売り場にも。何を言われるのだろうか…。ドキドキする五十嵐さんを横目に隅々までチェックし、下された結果は「とてもよく仕上がっている。これならお客さまにも喜んでいただける」という高評価でした。ホッと胸をなでおろすと同時に、店舗作りについての答え合わせができたように感じたと言います。この時のVMD集団の部長がJDCAの大髙先生で、ここで出会うことになります。その後、五十嵐さんはVMD部に異動希望を提出。人生の大きな分岐点となりました。

「じつは、異動希望を会社に提出する数日前に夢を見たんです。その夢は、ショップの店長という今の役職を続けていて、多少は出世もしたけれど、頭を抱えて苦悩し続け、もがいている自分の夢でした。目が覚めた瞬間、今のままではダメだ、自分を、環境を変えなければ…。怖いけれど、新しいことに挑戦しなければいけない。そうしなければ、夢で見た自分になると思い、異動希望を提出しました」。



プロとしての意識を高め、VMDディレクターとして活躍

希望が叶い、VMD部での仕事が始まりますが、五十嵐さんは当時を振り返り、「ここは外国?」と感じるほど、専門用語がまったくわからなかったと打ち明けてくれました。会議や打ち合わせをしてもさっぱり理解できなかったと苦笑いします。そんな状況を脱し、数年後にはVMDディレクターとして活躍をしている五十嵐さん。どんな経験を経て、実力を身につけたのでしょうか。

「当時は、プランナー(自分)とデザイナーの二人一組で業務を遂行するスタイルでした。そのデザイナーさんが優秀で、専門的なことから、仕事への向き合い方のようなものまですべてを教えてくれました」。

そのひとつに、今でも続けていることがあります。「例えば、誰でもふらっと何気なく店に入ることがあると思います。そのときに、なぜ、この店に入ったのだろうか。無意識の行動の裏側にある意識を分析し、理由を掘り下げることが大切なんです。VMDのプロなのだから、なぜこうなったのか、無意識の裏側にある答えを見つけ出すことを、今も自分に課して、実践しています」。

 そして、もうひとつ。あのウディ・シムコさん専属のアシスタントに選ばれたことも、飛躍する大きな要因となりました。VMDクリニックと称した活動の片腕として3~4年間も同行し、VMDの本質を習得していきます。

「クリエイティブディレクターとして、芯によいものとよくないもの判断基準がある。彼から学んだ仕事の姿勢が、その後の僕の基本となりました」。



起業し、海外進出も。日本流の素晴らしさに気づく

VMD部には約7年在籍し、五十嵐さんは独立を決意。退社するおよそ3年前から、社外の商業施設も手掛けるようになり、それがきっかけだったと述懐します。同業他社との付き合いが始まり、異業種の人々との接点も生まれたことで、自社と他社の違いやそれぞれの凄さも実感した五十嵐さんは、事業そのものに興味と意識が向かい始めます。自分でも事業を展開してみたいと直感したと話します。

「今の仕事は楽しいし、お給料も悪くない。けれど、販売員からVMD部へ異動したとき、窮地に追い込まれることで、人間は成長できることを実感しました。もう1回自分を追い込んで、成長するなら、今だ、と感じたんです」。

 2015年に起業するものの、すぐに軌道に乗ったわけではありません。その間に、これまでのVMD体験を整理したり、ビジネスモデルを構築したり…。試行錯誤を続けるなかででき上がったものが、VMD業界初の電子書籍「THINK!VMD Vol.1」でした。3Dデータなどを搭載し、わかりやすさを意識した仕様になっています。

 さらには、VMDの業務プロセスが少しでも簡略化され、本質的なことを考える時間を創出するためのサポートになればと、WEBサービス「Think!vmd」も立ち上げました。この背景には、販売員時代に資料作りを真面目にすればするほど残業がかさみ、残業王と称され、上司から絞られたという自身の苦い体験が生きています。

 中国での仕事は、現地に出向き、対象店舗の診断から始まります。「中国はスピード感があり、その場で答えや解決法が求められることが多いですね。瞬時に課題を見つけ出す能力と、その場で解決できるパフォーマンス力がとても重要です。グローバルで活躍する際に、日本人が持ち合わす丁寧さも強みになると実感しています」。

 瞬発力の養い方を尋ねると、「とにかく場数を踏むことです。けれど、みなさんが知りたいのは、場数を踏むチャンスを得る方法ですよね。それには、いいものをたくさん見ることです。ネットでも本でもいいですし、売れている店舗に出向いたり、美術館に行ったり。いいものに触れる機会はたくさんあります。けれど、目的を意識しなければ、どこに出かけても散歩しているようなもので、クリエイティブ力は養えないでしょう」と、明言します。



VMDはおもしろい!感動体験を共有しよう

最後に五十嵐さんに2つの事柄を伺いました。まずは、VMDの講師としての抱負です。

「受講生と講師という関係ではなく、一緒に未来を作っていく仲間として出会いたいと思っています。知識を交換し、共有できるJDCAは、まさに学びの場所。学びには、インプットとアウトプットを繰り返し行うことが大切です。とくにインプットは、『なぜ、こうなっているの?』といった、ひとつ掘り下げてみるというスタンスが重要になってきます。一緒に学んでいきましょう」。

 そして、最後に、VMDを職業として目指す人へのメッセージです。

「VMDはおもしろい! なぜおもしろいのかと言うと、VMDは、基本的に『非言語的コミュニケーション』だと思うのですが、言葉を介さないのに人と心が通じ合うんですね。そういうところが、最大の魅力です。VMDを通じて、店頭でお客さんが足を止めたり、買ってくれたり。こんなふうに『人の心と行動に作用する』っていうことは、私たちが提供するVMDとお客さんの心が通じ合ったということなんです。こんな感動体験を、ぜひみなさんと共有できたら、うれしく思います」。



五十嵐 雅浩VMDディレクター / JDCA 講師I APARTMENT LLC 代表

大手小売金融業での販売経験を経て、商業施設空間プロデュース企業にてディレクターとしてVMD を中心とした企業ブランディングに従事。WEBコミュニケーション事業を立ち上げ、VMD 業界初のWEB サービス「Think!vmd」を開発。中国など海外企業向けに店舗価値向上のディレクターとしても活動中。





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